コーヒー

●ブレンドこそ命
 世の中の喫茶店、ブレンドコーヒーが一番安い値段で、マンデリンだのキリマンジャロだのモカだのといった銘柄・産地別のがお高い値段なんで、ついつい「ブレンドコーヒーは銘柄別コーヒーのクズの寄せ集め」だなんて思ってませんか。三流のコーヒー店ならそうかもしれませんが、全然違います。
 庵主がこの文を書いている2014年は、ブルーマウンテンやハワイコナの不作が伝えられています。ハリケーンや病害虫が原因だそうです。生産量が回復するには数年かかるということで、国内のコーヒー店ではブルーマウンテンの取り扱いを中止するところも出ました。
 こんなふうに銘柄別のコーヒーは、不作などで量が減ったり味が変質したりすることが実に多いのです。そこで良心的なコーヒー店では、常に一定の味を保つために、こまごまと配合のレシピを変えるのです。
 皆様も初めての喫茶店に入ったら、ぜひブレンドコーヒーを注文してみてください。その味こそがその店の顔なのです。
 と、偉そうなことを書きましたが、こういう豆の配合ができるのは、卸業者か焙煎屋であり、銘柄別の豆を買ってきて適当に混ぜればいいというものではありません。餅は餅屋です。真理庵ではたまプラーザ ビーンズの豆を仕入れていますので、ブレンドもこちらの店のものそのままです。店主さんは非常にこだわりのある方で、腕は信頼できます。

●ドリップのしかた
 そのたまプラーザ ビーンズの店主さんがサイトの珈琲の入れ方にお書きになっているとおりです。
 あえて付け加えるとすれば、円を描くようにと言っても周辺部にまでお湯を注いではいけないということです。中心近くの部分で円を描くように注ぐのです。周辺部はコーヒー粉が浅く、ここを通ってできたコーヒーは全体の濃度を薄めてしまいます。韓国コーヒーのように薄味にするならいいかもしれませんが、中心部だけに注ぐようにしましょう。一面に注ぐのは最初の蒸らしだけです。
 それから、コーヒー専用のポットは口が細いので、誰が注いでもコーヒーの抽出に最適な細い流れになりますので、あまり神経質にならず、一気に注ぐ感じでいいのです。変にちょびちょびやるとドリッパーの湯が満杯にならず、渋みやアクが出てしまいます。
 そう、ビーンズの店主さんも書いておられるとおり、ドリッパーの湯は常に満杯にして、人数分出したらドリッパーをサーバーからはずすのです。もったいないと思ってはいけません。豆は無駄になっていません。無駄になっているとすれば水(お湯)だけです。
 このため真理庵では、1組(たいていは1人ですが、グループのお客様が同じコーヒーを注文なさった場合はまとめていれます)のコーヒーを入れるのにサーバーを2つ使っています。蒸らしはもう一つのサーパーの上でやります。蒸らしの時に若干抽出液(コーヒーですが、売り物にならないのでこう呼びます)が出てしまうからです。それからメインのほうに移り、最後の余りのときにまたもう一つのほうに移動します。
 ドリッパーは濾紙(ろし)を使うタイプがいいです。「紙ゴミが出てしまう。濾紙を使わずにすむものを」と、金属製のものもあります。某コーヒーチェーン店でもそういうのを売ってますし、庵主は金製のものを買って試しもしました。金製といっても約3000円くらい。金は安定していて溶けないので味に余計な影響を与えることがないから良かろうと思ったのですが、このタイプの欠点は、コーヒーのかすが少なからず抽出液の中に落ちてしまうということです。非常に細かいものなので、いったん落ちてしまうとザルなどで濾すことはもはや不可能。飲み終わるとカップの底にたまるのが美しくありません。まあ、トルココーヒーなどはそれが当たり前なので、気にしなければいいのですが、お客様のご理解は得られないだろうし、何より庵主自身がキライです。そんなわけで濾紙を使うものにはかなわないです。
 ドリッパーはカリタの陶製を使ってます。まあ濾紙を使うので素材は何でもよく、プラスチック製のほうが軽くて便利だと思いますが、最終的にカップという陶磁器に入るものは、やはり途中も同じような材質を用いるのが、変質を防ぐ意味ではいいかもしれません。

 なお、ドリップコーヒーはその性質上、できあがりがややぬるくなります。そもそもドリップするときのお湯の温度は熱湯ではなく、90-95度。80度台がいいという人さえいます。熱湯を用いると成分が変質してしまうのです。それからコーヒーメーカーのように下から温めるとやはり香りが変質してしまいます。昔の喫茶店には熱々のコーヒーを入れるところもありましたし、インスタントコーヒーなどは熱々になりますが、それらはすべてニセモノです。どうしてもということでしたら、抽出したコーヒーを温めてからお出ししますが、おすすめいたしません。

●アイスコーヒー
 何でもアイスにしてしまうのは現代日本文化と言えます。コーヒーの本場、たとえばブラジルには、アイスコーヒーなんてありません。コーヒーに限らずお茶を冷やすのは熱いまま出すより遙かに手間とエネルギーを消費します。そういうことができるようになったのも20世紀後半からというわけですね。
 冷製にするという発想は悪くはありませんが、コーヒーの命である香りはどうしても失われてしまいます。香りとは湯気になった水の粒子が鼻を刺激するものです。常温や冷水からも湯気は出ますがやはり熱いお湯から出る量にはかないません。ならばせめて味をしっかりさせたいものです。空気経由の鼻への刺激が望めないなら、舌経由でというわけです。
 ところで上の「ドリップのしかた」で、ちらっと韓国コーヒーの話をしました。韓国人はことコーヒーに関しては薄味を好むようで、なんとドリップコーヒーをお湯で薄めるんですね。日本にも韓国のチェーン店が進出してきたので飲むことができますが、私自身は好きではないのでツイッターでさんざん悪口を書いたことがありますが、でも考えてみれば、アイスコーヒーを作るときに、同じようなことをしてないでしょうか。そう、熱いコーヒーを氷に注いで作るのは、まさにドリップコーヒーを薄める行為そのものではないでしょうか。紅茶と違ってコーヒーは、一定以上に濃くすることができません。だから氷に注いで冷やすと、どうしても薄くなってしまうのです。
 ビーンズの店主も書いておられる通り(→アイスコーヒー)、コーヒーを普通にドリップして、あら熱をとって冷蔵庫で冷やしたものを、最後の最後に氷を入れていただくというのがいいのです。手間はかかりますが、真理庵ではこの方法をとっていきたいと思います。
 アイスコーヒーにはグラニュー糖は溶けにくいので、メープルシロップをおつけします。

●エスプレッソ
 イタリアではコーヒーはエスプレッソタイプしかありません。昨今はイタリアンバルが人気で、エスプレッソ及びそれを用いたアレンジメニューが日本人にもなじんできましたが、某チェーン店でエスプレッソを頼んだら「量が非常に少ないですけどよろしいですか」と聞かれましたし、別のチェーン店では特大サイズのエスプレッソが存在するなどというところを見ると、エスプレッソの定着度はまだまだ疑問です。
 エスプレッソとは高圧をかけて香りと味を抽出するもので、一応エスプレッソ用に細かく挽いた豆をドリップしてもそれっぽくはなりますが、機械を使わないと作れません。最近は家庭用エスプレッソマシンも安くなりましたがまだまだできがいまいちですね。真理庵ではデロンギの業務用マシンECAM22110SBHを使っています。本格的業務用マシンと家庭用マシンの中間というところ。本格的業務用マシンは電源も特別、水道管直結工事まで必要になりますが、これだと100V電源で使えるので、何でしたら皆様のご家庭でも使うことができます。デロンギからはこれよりワンランクダウンした家庭用マシンもいろいろ出ているのでそれがよろしいんじゃないでしょうか。
 エスプレッソは苦みが命なのでクリームは普通入れませんし、入れるならクリームよりミルクを入れてカフェ・ラテにするほうがいいですが、砂糖は入れたほうがいいです。無糖エスプレッソがお好きな方も多いので真理庵で無糖状態で出しますが、テーブルのお砂糖を入れることをおすすめします。クリームの必要な方はお申し出くださるか、カフェ・ラテのご注文をおすすめします。

●エスプレッソのアレンジメニュー
 エスプレッソは単独で飲むばかりでなくさまざまなアレンジメニュー(→エスプレッソ・アレンジ図鑑@cafe leafmoon)があります。真理庵で出しているものをご紹介します。
アメリカン
 エスプレッソをお湯で薄めて普通のコーヒーカップでいただくものです。イタリアではカフェ・アメリカーノといいます。つまりはアメリカンですね。ドリップコーヒーをお湯で薄める韓国コーヒーや日本で一般的にいうアメリカンはここから着想を得た別物(由来は諸説あり)で、本来はエスプレッソを薄めてこそまともな味になるというものです。
カフエ・ラテ
 エスプレッソにホットミルクをたっぷり入れて普通のコーヒーカップでいただきます。ドリップコーヒーでこれをやると味が薄くなってしまいます。やはりエスプレッソでやってこそです。
カプチーノ
 ミルクを泡立ててエスプレッソに注ぎます。ミルク自体でハート型などいろんな形を作ったりさらには絵を描いたりすることもあります。

●ココア
 ココアはコーヒーとは異なりますが、便宜上こに書きます。しかし、コーヒー豆とカカオ豆の違いはあれど、熱帯産の豆からできた飲み物という点では似ているところがあるかもしれません。
 ココアは日本の大手メーカー数社が出してはいますが、ブランド力と定評という点ではバンホーテンの一人勝ちというところです。コーヒーのように町中の小さな店で焙煎をやっているというわけではないので、真理庵でもこれを使っています。
 コーヒーと違って体にやさしく、お子さま用飲み物という印象もありますが、よくできたココアパウダーで作るココアは上品なおいしさ、もっと愛飲したいものです。